5Gは、高速大容量(eMBB: enhanced Mobile BroadBand)、超高信頼低遅延( URLLC: Ultra-Reliable and Low Latency Communications ) 、 超多数接続(mMTC: massive Machine Type Communication)という特徴があり、それぞれ20Gbps、1msec、100万台という数値目標が掲げられています。
今回は、5Gの特長の一つである高速大容量通信「eMBB」について掘り下げてみたいと思います。
10Gbpsとは
そもそも10Gbpsとは、どこの層でのスループットを指しているのでしょうか。仕様の標準化を行っている3GPPの文書などでも10Gbpsという数字が出てきますが、どの層での値なのかは記述されていません。図1に示すように本来送るべきデータに対して、各層ではデータのサイズが異なります。ここでは、よく基準として使用される高レイヤ物理層でのサイズを基準として、スループットを検討したいと思います。
図1 各層とデータサイズの関係
スループットを決めるのは
無線通信を行うためには図2のように物理的なリソースが必要です。その単位をリソースブロックといいます。これが時間軸方向、周波数軸方向それぞれに積み重なって大量のデータを送ることが可能となります。送信可能な最大データサイズは、時間占有率、周波数帯域幅、OFDMの周波数間隔、信号処理で使用するパイロット信号のサイズ、そして変調方式、符号化率により決まります。ただし組み合わせが膨大になるため、データサイズはインデックスMCS(Modulation Coding Scheme)を用いて表されます。詳細は、別の機会でご紹介することとし、今回は最大サイズのみに着目したうえで、データサイズを計算したいと思います。
図2 無線リソースブロック
スループットの計算
3GPP TS36.104に記載されている仕様に基づき、表1に示す変数でスループットを算出すると約400Mbpsとなります(計算方法の詳細については別の機会でご説明します)。この値は、1アンテナ当りのスループットです。送受信ともに8アンテナを使用した場合には、凡そ8倍のスループット3.2Gbpsの通信が可能となります。ローカル5Gの中でも、ミリ波28GHzの周波数帯は帯域が広いため、例えば800MHzの帯域を使用することも可能です。この場合、スループットはさらに8倍の25.6Gbpsとなります。ここで図1の話に戻りますが、高レイヤ物理層での値を今度はIP層のデータサイズに置き換えて計算してみます。確かにスループットが下がりますが、仮に約1割減だとしても23.1Gbpsになります。
つまり、800MHzという広帯域で、アンテナ8本をフルに活用した場合では、20Gbpsを達成することができます。しかし、これはあくまでベストエフォートであって、無線環境が良い場合の値となり、実際の無線環境においてここまで到達するのはかなり難しいと言えるでしょう。
表1 変数一覧
SCS | 30kHz |
Bandwidth | 100MHz |
PRB数 | 273 |
PRB当りのDMRSシンボル数 | 2 |
MCS index table選択 | 2 |
MCS | 27 |
Slot/frame(10msec当たり、20slot) | 14 |